「東奔西走」の意味
「東奔西走」(とうほんせいそう)とは、目的を達成したり仕事を処理したりするために、あちこち忙しく走り回ることを意味する四字熟語です。東へ西へと奔走する様子を表しており、「奔」も「走」も「走る」という意味を持っています。単なる忙しさではなく、何らかの目的があって努力している状態を表現しています。
「東奔西走」の由来と歴史的背景
「東奔西走」の語源は中国の古典『荘子』に由来します。この四字熟語は「互文(ごぶん)」と呼ばれる修辞法で作られています。互文とは、「東奔」と「西走」という二つの熟語を互い違いに組み合わせることで意味を補完し合う表現方法です。
「東」と「西」という反対の方角を示すことで「広い範囲」「あちこち」を表し、転じて「世間」を意味する場合もあります。「奔走」は「忙しく走り回る」「事が順調に運ぶようにあちこちかけまわって努力すること」という意味があり、これらが組み合わさって「東奔西走」という四字熟語が生まれました。
「東奔西走」の現代における使い方と例文
現代では、ビジネスや日常生活において、何か目標や目的があって忙しく動き回る様子を表すときに使用されます。単に忙しいだけ、動いているだけという状態を表す場合には使わないので注意が必要です。
例文
- 「新規事業が軌道にのるまでは、東奔西走する日々だった」
- 「従業員の雇用を守るために、社長自ら、資金集めに東奔西走した」
- 「修学旅行の行き先を決めるために、学校の先生が東奔西走していた」
- 「私は夢を叶えるために東奔西走する」
- 「今日は借金の工面で東奔西走した」
- 「転勤が非常に多い職場に入ってしまったので、3年程度で他県へ東奔西走する生活になってしまった」
「東奔西走」の対義語と類語
対義語
- 飽食終日(ほうしょくしゅうじつ):一日中食べて過ごすこと。何もしないでぶらぶらと過ごすこと。
- 無為徒食(むいとしょく):やるべきことを何もしないでただ遊び暮らすこと。
- 安閑恬静(あんかんてんせい):安らかで静かで穏やかなこと。
類義語と誤用
「東奔西走」と混同されやすい四字熟語に「右往左往」(うおうさおう)があります。「右往左往」は「うろたえて、あっちへ行ったりこっちへ来たりすること」を意味し、予測不能な出来事が起きて慌てている様子を表すときに使います。「東奔西走」は目的があってあちこちを走り回る意味なので、両者は大きく異なります。
類義語としては、以下のようなものがあります:
- 南船北馬(なんせんほくば):全国各地を旅すること、絶えず旅をしていること
- 粉骨砕身(ふんこつさいしん):骨を粉にし、身を砕くほどに努力すること
「東奔西走」の英語表現
「東奔西走」に相当する英語表現としては、以下のようなものがあります:
- be constantly on the move(絶えず動き回っている)
- run here, there and everywhere(あちこち駆け回る)
- run around everywhere(あらゆる場所を走り回る)
- busy oneself about something(何かに忙しく取り組む)
- run around like a headless chicken(無目的に忙しく動き回る様子)
「東奔西走」は、単なる忙しさではなく、目的達成のために懸命に努力している様子を表す四字熟語です。中国古典から来た言葉で、ビジネスやプロジェクトにおける努力や奮闘を表現するのに適しています。「右往左往」などと混同せず、適切に使うことで、日本語表現をより豊かにすることができます。