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「天下三分の計」の意味
「天下三分の計」(てんかさんぶんのけい)とは、強敵がいて天下全体を支配するのは難しいので、天下を三つに分けて支配するように持っていこうとする戦略のことを指します。勢力が劣る側が、より強大な勢力に対抗するために考案された戦略です。
「天下三分の計」の由来と歴史的背景
「天下三分の計」の由来は主に二つあります:
- 原初の由来: もともとは、『史記』の「淮陰侯伝」で、蒯通(かいとう)という参謀が、将軍の韓信(かんしん)に提案した戦略が起源とされています。
- 三国志における有名な例: より広く知られているのは、中国の後漢末期、三国時代の始まりにおける諸葛亮(孔明)が劉備に説いた戦略です。これは「隆中策」または「隆中対」とも呼ばれています。劉備が三顧の礼(さんこのれい:三度訪問すること)を尽くして諸葛亮を訪ねた際に、諸葛亮は当時の情勢を分析し、天下を曹操・孫権・劉備の三人で分割して支配する策を提案しました。
諸葛亮の「天下三分の計」は以下の内容でした:
- 劉備が荊州(けいしゅう)と益州(えきしゅう)を領有する
- 東の孫権と同盟を結ぶ
- 曹操の弱みを待って中原に攻め込む
- 最終的には漢王朝の復活を目指す
この戦略は、現実に三国鼎立(魏・呉・蜀)という歴史的状況を生み出すことになりました。
「天下三分の計」の現代における使い方と例文
現代における使い方
現代でも、「天下三分の計」という言葉は様々な場面で使われています:
- 政治・外交分野: 国際政治において三大勢力が拮抗し均衡を保つ状況を表現するときに使われます。例えば、冷戦時代の米ソ中の関係などを説明する際に用いられることがあります。
- ビジネス戦略: 企業が業界内で三つの大きな勢力に分かれて競争する状況を指して使われます。例えば、「この業界は○○社、△△社、□□社による天下三分の計の状態だ」などと表現されます。
- 組織戦略: 組織内で勢力を三分割し、互いに牽制しあって均衡を保つ手法を「天下三分の計」と呼ぶことがあります。
例文
- 「この業界は、古くからの大手二社に加え、新興企業の台頭により、まさに天下三分の計の様相を呈している」
- 「彼の提案した戦略は、市場を三つの領域に分けて段階的に攻略するという天下三分の計のような巧みなものだった」
- 「戦後の世界秩序は、アメリカ・ソ連・中国による天下三分の計の状態が続いた」
- 「『三井、三菱を圧倒するか、あるいはその二つと並んで天下を三分する』という目標を掲げていた」
「天下三分の計」の対義語
「天下三分の計」の対義語としては、「天下一統」(てんかいっとう)が挙げられます。天下一統は、国土を分割せず一つに統一することを意味します。
また、間接的な対義概念としては「中央集権」や「独占」なども考えられるでしょう。
「天下三分の計」の英語表現
「天下三分の計」の英語表現としては、以下のようなものがあります:
- “The plan of dividing the empire into three parts”
- “The Tripartite Division Strategy”
- “The Strategy of Three Kingdoms”
- “The plan of splitting up China into three territories”
「天下三分の計」は、単なる歴史上の戦略にとどまらず、現代でも通用する普遍的な戦略思想として生き続けています。弱者が強者に対抗するための知恵、複数の勢力間でバランスを取る術として、現代のビジネスや政治の世界でも参考にされています。諸葛亮の戦略眼と先見性は、2000年近くたった現代でも多くの人々に影響を与え続けているのです。