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「おいてけぼり」の意味
「おいてけぼり」(または「おいてきぼり」)は、他の者を残したまま、その場を去ってしまうこと、つまり置き去りにすることを意味する日本語の慣用表現です。
一緒にいた人を待たずに先に行ってしまったり、約束の時間に遅れた人をそのまま待つことなく出発してしまったりする状況を指します。また、比喩的に「話についていけない」「理解が追いつかない」という状況でも使われます。
「おいてけぼり」の由来と歴史的背景
江戸時代の怪談「置いてけ堀」
この言葉の語源は、**江戸時代の「本所七不思議」の一つとされる怪談「置いてけ堀(おいてけぼり)」**に由来します。
伝説の内容
- 場所: 江戸本所(現在の東京都墨田区錦糸町付近)にあった池や堀
- 現象: この池で釣りをして魚を釣り、さて帰ろうとすると、水中から「おいてけ〜、おいてけ〜」という不気味な声が聞こえてくる
- 結末: 恐ろしくなった釣り人は、釣った魚を全部置き去りにして逃げ帰った
この怪異現象が何度も起こったため、その池は「置いてけ堀」と呼ばれるようになりました。
本所七不思議とは
本所七不思議は、江戸時代中期(1690〜1780年頃)に成立したとされる、墨田区本所地域を舞台とした7つの怪異譚の総称です。「置いてけ堀」はその中でも特に有名で、落語などにも多く取り上げられました。
声の正体
伝説では、声の正体について諸説あります:
- 河童(かっぱ)の仕業とする説
- 怨霊や水の精霊とする説
- 三代目歌川国輝の作品「本所七不思議之内 置行堀」(1886年/明治19年)には、怨霊の姿が描かれています
「おいてけぼり」の現代における使い方と例文
基本的な使い方
- 物理的に置き去りにする場合
- 「バスに乗り遅れて、友達においてけぼりにされた」
- 「子供をおいてけぼりにして帰るわけにはいかない」
- 比喩的な使い方(理解が追いつかない)
- 「技術の進化が速すぎて、おいてけぼりを食らった」
- 「議論が専門的すぎて、おいてけぼりにされた気分だ」
- 「デジタル化の波においてけぼりにされている」
- ビジネスシーンでの使い方
- 「市場の変化についていけず、競合他社においてけぼりにされた」
- 「プロジェクトの進捗が速く、新入社員がおいてけぼりになっている」
注意点
- 「おいてけぼり」と「おいてきぼり」、どちらも使用可能ですが、現代では「おいてけぼり」を使う人のほうがやや多い傾向があります
- 成り立ちについては「置いて+来(き)+放(ほう)り」の略とする説もあり、明治中期の「日本大辞書」(1892〜93年)はこの立場を取っています
例文
日常生活での例文
- 「待ち合わせに遅れたら、みんなにおいてけぼりにされた」
- 「皆行ってしまって僕一人おいてけぼりにされた」
- 「子供たちは走って先に行ってしまい、私はおいてけぼりだ」
ビジネス・社会的な例文
- 「AI技術の発展が速すぎて、日本企業がおいてけぼりにされる危機だ」
- 「グローバル化の波においてけぼりにされないよう努力が必要だ」
- 「会議の内容が高度すぎて、おいてけぼりを食った」
「おいてけぼり」の類語と対義語
類語
「おいてけぼり」と似た意味を持つ表現:
- 置き去り(おきざり)
- 放置(ほうち)
- ほったらかし
- 取り残される
- 仲間はずれ
- 見捨てる
- 先に行く
- 残して行く
- 待たない
ビジネスでの言い換え
- 「取り残される」
- 「後れを取る」
- 「遅れをとる」
- 「乗り遅れる」
対義語
明確な直接的対義語はありませんが、反対の意味を持つ表現としては:
- 連れて行く
- 同行する
- 待つ
- 一緒に行く
- 付き添う
- 追いつく
- 仲間に入れる
- 包摂する(ほうせつする)- 誰もおいてけぼりにしない状態
「おいてけぼり」の英語表現
直接的な表現
- “leave behind”
- “Don’t leave me behind!”(私をおいてけぼりにしないで!)
- “We were left behind by the group.”(グループにおいてけぼりにされた)
- “be left out”
- “I felt left out of the conversation.”(会話においてけぼりにされた気がした)
- “abandon”
- より強い「見捨てる」というニュアンス
比喩的な表現
- “fall behind”
- “We’re falling behind in technology.”(技術的においてけぼりにされている)
- “be excluded”
- “I was excluded from the meeting.”(会議から除外された)
- “be stranded”
- 取り残される、孤立する
例文
- “The country risks being left behind in the digital revolution.”
(その国はデジタル革命においてけぼりにされるリスクがある) - “I couldn’t keep up with the discussion and felt left out.”
(議論についていけず、おいてけぼりにされた気分だった)
「おいてけぼり」は、江戸時代の怪談から生まれた言葉が現代まで受け継がれ、日常生活からビジネスシーンまで幅広く使われる表現となっています。その背景にある「置いてけ堀」の伝説を知ることで、言葉の深みをより感じることができるでしょう。
