【南船北馬】って何??

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「南船北馬」の意味

「南船北馬」(なんせんほくば)は、中国の南方では船、北方では馬を利用して各地を旅することを意味します。これは広く旅をして見聞を広めることや、各地を遍歴することを表現しています。

「南船北馬」の由来と歴史的背景

この言葉の由来は古代中国にあります。中国南部は河川が発達していたため船での移動が主流であり、北部は乾燥した平原や砂漠地帯が広がっていたため馬での移動が一般的でした。このような地理的特性から生まれた表現です。

この四字熟語の歴史的背景は、中国の地理的特性に深く関連しています。古代中国では、淮河(わいが)を境に南北で地理や気候が大きく異なっていました。南方は長江(揚子江)や珠江を中心とした水系が発達し、水量が豊かな川や湖が多く存在していました。一方、北方は山野や平原が広がり、黄河は土砂の堆積により天井川となり、船での交通には適していませんでした。

出典としては、前漢時代の哲学書『淮南子(えなんじ)』が挙げられます。この書物には「胡人(北方の異民族)は馬を便利とし、越人(南方の人々)は船を便利とする」という記述があります。この地域的特性の違いから、「南船北馬」という表現が生まれたとされています。

この言葉が一般的に広く使われるようになったのは、4〜5世紀頃の南北朝時代からではないかと考えられています。中国が南北に分裂していた時期に、淮河の線が南北の分界線として機能していたことも、この言葉の普及に関係しているでしょう。

「南船北馬」の現代における使い方と例文

現代における使い方

現代では「南船北馬」は以下のような意味で使われています:

  1. 広く旅をして見聞を広めること
  2. 各地を忙しく駆け回ること
  3. 絶えず旅を続けること
  4. 東奔西走(とうほんせいそう)と同様の意味で、あわただしく動き回ること

特にビジネスや研究などで各地を回って活動する様子を表現するときによく用いられます。

例文

現代社会における「南船北馬」の使い方をいくつか例文でご紹介します:

  1. 「新規事業を成功させようと、彼は南船北馬、ほとんど休日もとらない毎日を送っている」
  2. 「国際ジャーナリストとして南船北馬の生活を送る彼女は、常に世界の紛争地域を駆け巡っている」
  3. 「近衛公、最上名門の胄を以て、南船北馬少も労を辞する無く」(中江兆民『一年有半』より)
  4. 「先考の深く中華の文物を憬慕せらるるや、南船北馬その遊跡十八省に遍くしてなお足れりとせず」(永井荷風『来青花』より)
  5. 「定年後は南船北馬の旅を楽しみ、日本全国の隠れた名所を訪れる計画だ」

「南船北馬」の対義語

対義語

  1. 悠々自適(ゆうゆうじてき):俗世間から身を引いて、のんびりと思うままに暮らすこと。
  2. 安居楽業(あんきょらくぎょう):安らかに住み、楽しく仕事をすること。
  3. 晴耕雨読(せいこううどく):晴れた日には畑を耕し、雨の日には本を読むという、のんびりとした生活。

これらは忙しく旅をする「南船北馬」とは対照的に、一カ所に落ち着いて穏やかに過ごすことを表す言葉です。

類語

  1. 東奔西走(とうほんせいそう):「あちらこちらを忙しく駆け回ること」という意味で、「南船北馬」とほぼ同じ意味で使われます。
  2. 東行西走(とうこうせいそう):「東へ行ったり西へ行ったりすること」という意味で、「南船北馬」と同じく、各地を忙しく旅する様子を表します。

「南船北馬」の英語表現

「南船北馬」を英語で表現する場合、以下のような表現があります:

  1. Restless wandering(絶え間ない放浪)
  • 例:He is in restless wandering.(彼は南船北馬の生活を送っている)
  1. Constant travelling/traveling(絶え間ない旅行)
  • 例:Her job requires constant travelling throughout the year.(彼女の仕事は年中南船北馬を必要とする)
  1. Being on the move(常に移動している状態)
  • 例:As a war correspondent, I’m always on the move.(戦争特派員として、私は常に南船北馬の状態だ)

まとめ

「南船北馬」は、古代中国の地理的特性から生まれた言葉で、「南へは船で、北へは馬で旅をする」という直接的な意味から、「絶えず旅を続けること」や「各地を忙しく駆け回ること」を意味するようになりました。現代では特にビジネスマンや研究者など、多忙な生活を送る人々の状態を表現するのによく使用されます。

対義語としては「悠々自適」や「晴耕雨読」などがあり、英語では「restless wandering」や「constant travelling」などと表現されます。

この四字熟語は、日本語の豊かな表現力を示す好例であり、古代中国の地理的条件から生まれた言葉が、時代を超えて現代にも通用する普遍的な意味を持つようになった興味深い例といえるでしょう。

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