「空前絶後」の意味
「空前絶後」(くうぜんぜつご)とは、「それまでには例がなく、その後も例を見ない」という意味の故事成語です。現代的には「いまだかつてなく、今後もまずありえない」という意味で使われることが多く、非常に珍しいことや稀なことを表現する際に用いられます。
「空前絶後」は「空前」と「絶後」という二つの熟語から成り立っています:
- 「空前」:それより以前に例がない様子、未曾有であること
- 「絶後」:将来二度と起こらないようなこと
つまり、過去にも例がなく、未来にも起こりそうにないほど珍しい事象を指す言葉です。
「空前絶後」の由来と歴史的背景
「空前絶後」という言葉の初出は比較的新しく、日本の明治時代に見られます。西周(にしあまね)による『西洋事情』(1866-70年)の中で「実に空前絶後の英主と称す可し」という形で使われたのが最初の実例とされています。
もともと「空前」と「絶後」はそれぞれ独立した言葉でしたが、明治期になってこれらが結びつけられ、四字熟語として定着しました。中国語の影響を受けて作られた和製漢語の一つと考えられています。
「空前絶後」の現代における使い方と例文
現代における使い方
現代では、「空前絶後」は単に「前例のない」という意味だけでなく、その珍しさや特別さを強調するために用いられることが多くなっています。例えば、新製品のプロモーションや映画の宣伝などで「空前絶後のヒット作」「空前絶後のスケールで描く超大作」といった表現でよく使われます。
ただし、厳密には「空前絶後」は将来にわたって二度と起こり得ないことを意味するため、使用には注意が必要です。例えば、刑事裁判で「被告の犯行は空前絶後の凶悪なものであり…」と言うのは厳密には正しくありません。なぜなら、将来さらに凶悪な犯罪が発生する可能性を否定できないためです。
例文
- 「人気アイドルのツアーがあるため、このあたりは空前絶後の人だかりになっている」
- 「短距離競走で空前絶後の記録がつくられた」
- 「空前絶後の大ヒット作となった商品をバージョンアップしたいと思います」
- 「武則天は中国史上空前絶後の女帝である」
「空前絶後」の対義語と類語
対義語
「空前絶後」の対義語として明確に定まったものはありませんが、「ありふれている」「平凡である」「大同小異(だいどうしょうい)」などがその意味の反対を表す言葉として挙げられます。
また、「前例あり」「常套句(じょうとうく)」「十八番(おはこ)」なども、「前例のない」という意味の反対として使われることがあります。
類語
「空前絶後」に似た意味を持つ言葉としては以下のものがあります:
- 前代未聞(ぜんだいみもん):これまで聞いたことがないほど珍しいこと
- 未曾有(みぞう):かつて一度もなかったこと
- 曠前空後(こうぜんくうご):これまでにもこれからもないと思われるような非常に珍しい様子
- 麒麟の一角(きりんのいっかく):非常に珍しく貴重な人物や物事を表す表現
「空前絶後」の英語表現
「空前絶後」に相当する英語表現としては、以下のようなものがあります:
- unprecedented and never to be repeated:前例がなく、二度と繰り返されない
- once in a lifetime:一生に一度の
- the first and probably the last:最初で恐らく最後の
- like no one before or since:前にも後にもない
- unparalleled and unrepeatable:比類なく、繰り返せない
例文:
- There never was and never will be such a large attendance as this.(これほどの大勢の参加者は前にも後にもないでしょう)
- His achievement is unprecedented and never to be repeated.(彼の功績は空前絶後のものだ)
「空前絶後」は、過去にも未来にも例がないほど珍しい事象を表す強い表現です。現代では広く用いられていますが、「将来にわたって二度と起こらない」という意味を含むため、使用には注意が必要です。適切に使用すれば、物事の稀有さや特別さを効果的に伝える表現となります。