「権謀術数」の意味
「権謀術数」は、巧みに人を欺く策略や計略という意味の四字熟語です。この言葉は4つの漢字からなり、それぞれに意味があります:
- 「権」は権力
- 「謀」は謀略
- 「術」は技法
- 「数」は計算・はかりごと
「権謀術数」の由来と歴史的背景
由来
この四字熟語の初出は中国宋代の儒学者・朱子(朱熹)の『大学章句序』とされています。12世紀に活躍した朱子が、儒学の重要な古文献『大学』に注釈を加えた文章の中で使用したことが由来となっています。
「権謀」はその場に応じた臨機応変の策略、「術数」ははかりごとやたくらみを意味し、これらが組み合わさって「様々な計略をめぐらすこと」という意味になりました。小さな会話のテクニックから賄賂、恐喝、暗殺などの直接的な手段まで、目的のために使うあらゆる策略を含みます。
歴史的背景
「権謀術数」は歴史的には、主に権力闘争の場で使われてきた言葉です。特に中国の政治文化において重要な概念でした。
西洋においては、イタリアのルネサンス期の政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリが1513~14年に著した『君主論』の思想と強く結びついています。マキャヴェッリは現実的な権謀術数が政治の本質であると説き、目的のためには手段を選ばない考え方を示しました。この思想は「マキャヴェリズム」(権謀術数主義)と呼ばれ、世界各地の政治思想に影響を与えました。
日本の歴史においても、平安時代から江戸時代まで数々の権謀術数が繰り広げられてきました。例えば、徳川家康は権謀術数に長けた人物として知られ、豊臣氏の排除など巧みな策略を用いて天下統一を成し遂げました。
「権謀術数」の現代における使い方と例文
現代における使い方
現代では、「権謀術数」はビジネスシーンや政治の場などで使われることが多い言葉です。以下のような状況で使われます:
- 組織内での出世や昇進のための策略を表す場合
- 競争相手を出し抜くための戦略を表す場合
- 政治家の戦術を批評する場合
例文
- 「彼がスピード出世したのは、単に能力があるだけでなく、権謀術数に長けているためだ」
- 「他社との競争を勝ち抜くためには、権謀術数を巡らす必要もある」
- 「政界の黒幕と呼ばれる彼は、権謀術数の達人だ」
- 「トランプ・プーチン・習・金など現代の権力者は皆、権謀術数に長けている」
実際の権謀術数の例としては:
- 上役に、ある問題を解決した当人がいない所で、自分がその問題に対し大変な苦労をしたように雄弁を振るう
- 排斥したい他者の行動を語る際、誇張と虚実を加えて周囲に印象づける
- 会う機会を増やす、一緒に食事をする、譲る、花を持たせる、気遣うなどの技術的なアプローチ
「権謀術数」の対義語
「権謀術数」の対義語としては、以下のような言葉が挙げられます:
- 誠心誠意(せいしんせいい):心から誠意をもって接すること
- 馬鹿正直(ばかしょうじき):策略を用いず、ただ正直に行動すること
これらは策略ではなく、純粋な心や正直さで物事に取り組む姿勢を表しています。
「権謀術数」の英語表現
「権謀術数」を英語で表現する場合、いくつかの言い方があります:
- Machiavellianism(マキャヴェリズム):マキャヴェッリの思想に由来する表現
- Scheming(策略):「He is a scheming politician」(彼は権謀術数に長けた政治家だ)
- Trickery(策略、欺き)
- Wiles(策略、計略)
- Finesse(巧みさ、手腕)
例文:
- He seized power after some clever scheming.(彼は権謀術数を巡らして権力を握った)
- His political enemies seem to be scheming against him.(政敵たちが彼に対して権謀術数を巡らしているようだ)
- He is a master of political Machiavellianism.(彼は政治的な権謀術数の達人だ)