【五里霧中】って何??

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「五里霧中」(ごりむちゅう)は、物事の状況や事情が全く分からず、方針や見通しが立たずに困っている状態を表す四字熟語です。まるで広範囲にわたって霧に包まれた中にいるように、どの方向に進むべきかが見えず、判断ができない状況を比喩的に表現しています。

中国古典『後漢書』の故事から

「五里霧中」の語源は、中国の歴史書『後漢書(ごかんじょ)』の「張楷伝(ちょうかいでん)」に記載された故事に由来します。

後漢時代(25年-220年)に張楷(ちょうかい)という儒学者・道士がいました。後漢書によると、張楷は道術を好み、五里(約19.6km)にわたって霧を起こす秘術「五里霧」を使うことができたとされています。

張楷という人物

張楷は:

  • 字を公超(こうちょう)といい、隠遁者でした
  • 官職に就くことを嫌い、道術の修練に専念しました
  • 人嫌いで、この「五里霧」の術を使って自分の姿をくらまし、人との接触を避けていました
  • 当時、関西の裴優(はいゆう)という人物が「三里霧」を起こすことができましたが、張楷の技術に及ばず、師事しようとしても張楷は会うことを避けたと記録されています

現代における使い方

使用場面

  • 仕事やプロジェクトで方向性が見えない時
  • 人生の進路に迷っている時
  • 複雑な問題の解決策が見つからない時
  • 事件や問題の全容が分からない時

注意点

「五里霧中」は軽い困惑ではなく、本当に困り果てている深刻な状況に対して使用する言葉です。

例文

現代的な使用例

  1. ビジネス場面:「新規事業の立ち上げで、五里霧中の状態からスタートした」
  2. 人生の選択:「転職すべきか迷っていて、五里霧中の日々が続いている」
  3. 学習・研究:「この難解な理論について、まだ五里霧中の状態です」
  4. 事件・問題:「事件の真相は未だ五里霧中のままである」

文学作品での使用例

夏目漱石の『明暗』(1916年)では:
「彼は今日までその意味がわからずに、まだ五里霧中に彷徨していた」

類語

  • 暗中模索(あんちゅうもさく):手探りで解決策を探す状態
  • 曖昧模糊(あいまいもこ):物事がはっきりしない様子
  • 雲をつかむよう:不確かで捉えどころがない状態
  • 途方に暮れる:どうしてよいか分からない状態

対義語

主な対義語

  • 一目瞭然(いちもくりょうぜん):ひと目見ただけで、はっきりとよく分かること
  • 明鏡止水(めいきょうしすい):心が澄みきっていて、邪念のない状態

主な英語表現

  • “in the fog” – 霧の中にいる状態
  • “at a loss” – 途方に暮れている
  • “all at sea” – 全く分からない状態
  • “in the dark” – 暗闇の中、情報がない状態
  • “bewildered” – 当惑している
  • “lost in confusion” – 混乱の中で迷っている

英語例文

  • “We’re all at sea about where to take our company from here.”
    (これからどう会社を経営していったらいいのか、五里霧中だ)
  • “I’m completely in the dark about this project.”
    (このプロジェクトについては全く五里霧中です)

「五里霧中」は、古代中国の道術師張楷の故事に由来する歴史ある表現で、現代でも深刻な困惑や迷いの状態を表現する際に広く使われています。単なる迷いではなく、方向性が全く見えない状況を表現する際に適切に使用することが重要です。

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