【呉越同舟】(ごえつどうしゅう)とは??

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「呉越同舟」(ごえつどうしゅう)とは、敵同士や仲の悪い者同士が、同じ災難や困難に直面した時に、利害を一致させて協力することを意味する四字熟語です。

由来

この言葉は、中国古代の兵法書『孫子』の「九地篇」に由来します。

歴史的背景

  • 呉と越:春秋時代(紀元前8世紀~5世紀)の中国に存在した二つの国
  • 関係性:長年にわたって激しく対立し、互いを滅ぼそうとした宿敵同士
  • 地理:現在の江蘇省南部から浙江省にかけての地域に位置

呉と越は、古代中国において宿敵同士であり、しばしば戦争を繰り返していました。しかし、ある時、両国の人々が同じ舟に乗り、暴風雨に遭遇しました。この時、彼らは互いに助け合い、協力して危機を乗り越えたことから、「呉越同舟」という言葉が生まれました

『孫子』での記述

孫子は軍事戦略を説明する中で、「呉人と越人とは相憎むも、その舟を同じくして川を渡る時、風に遭えば、その相救うこと左右の手の如し」と述べました。これは、どんなに憎み合う敵同士でも、同じ船で川を渡っている時に嵐に遭えば、お互いを助け合うのは自然なことだという意味です。

現代における使い方

「呉越同舟」は、ビジネスや政治の場面でもよく使われます。例えば、普段は対立している企業や政党が、共通の利益や目的のために協力する際にこの表現が用いられます。具体的には、業界の大手企業が共同プロジェクトに参画する場合や、与野党が環境問題に取り組む際に「呉越同舟」と表現されることがあります

  1. 政治分野:対立する政党同士が国家的危機に協力する場合
  2. ビジネス:競合企業が業界全体の問題に共同で取り組む場合
  3. 国際関係:敵対国同士が共通の脅威に対処する場合
  4. 日常生活:普段仲の悪い人同士が困難な状況で協力する場合

例文

  1. 政治:「与野党は普段は対立しているが、この国家的危機においては呉越同舟の精神で協力している」
  2. ビジネス:「ライバル会社同士も、業界全体の規制問題には呉越同舟で対応する必要がある」
  3. 災害時:「平時は犬猿の仲の隣人同士も、震災時には呉越同舟で助け合った」
  4. 学校:「クラスの中で対立していたグループも、文化祭の成功のためには呉越同舟で取り組んだ」

このように、「呉越同舟」は、普段は敵対している者同士が、共通の目的のために協力し合うことを象徴する言葉として広く使われています。

「呉越同舟」は、仲の悪い者同士が同じ場所にいることや、共通の困難や利害に対して協力し合うことを表す言葉でもあります。この表現は、単に協力するだけでなく、敵対する者同士が同じ状況に置かれた際に、互いに助け合うことを強調しています.

また、呉と越の国の歴史的背景において、彼らは互いに憎しみ合っていたにもかかわらず、同じ舟に乗り合わせた際には、まるで左右の手のように協力し合うという教訓が「孫子」に記されています。このことから、敵対する者同士でも、共通の危機に直面すれば協力することができるというメッセージが込められています.

さらに、現代においては、企業同士や国家間の関係においても「呉越同舟」という表現が使われることが多く、特にビジネスシーンでは、競争相手が共通の利益のために手を組むことを指す場合に用いられます

対義語

  • 同床異夢(どうしょういむ):表面上は協力しているように見えても、内心では異なる目的を持っていること
  • 呉越の敵:呉と越のような宿敵関係

類語

  • 相提携(そうていけい):互いに手を取り合って協力すること
  • 共同戦線:共通の目的のために協力すること
  • 一致団結:心を合わせて協力すること

「呉越同舟」を英語で表現する場合、以下のような表現が使われます:

  1. “Enemies in the same boat”
    • 直訳的な表現で、最も近い意味
  2. “Strange bedfellows”
    • 「奇妙な寝床仲間」という意味で、普通なら協力しない者同士が協力する状況を表す
  3. “Politics makes strange bedfellows”
    • 政治的文脈でよく使われる表現
  4. “Adversaries united by common cause”
    • より説明的な表現
  5. “Temporary alliance between enemies”
    • 敵同士の一時的な同盟という意味

「呉越同舟」は、中国古代の歴史から生まれた深い教訓を含む言葉です。人間関係や国際関係において、共通の困難や危機に直面した時には、普段の対立を超えて協力することの重要性を示しています。現代社会においても、様々な場面でこの精神が求められることがあり、非常に実用的で意義深い四字熟語と言えます。

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