「覆水盆に返らず」って何??

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覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)は、一度起きてしまったことは元に戻すことができない、取り返しがつかないという意味のことわざです。

このことわざの由来は、古代中国の故事にあります。

殷(いん)の時代末期、後に太公望として知られる呂尚(りょしょう)という人物がいました。彼は毎日読書にふけってばかりいて、生活は貧しく、妻を養うことができませんでした。妻は夫に愛想を尽かして家を出て、他の男性と結婚してしまいました。

その後、呂尚は周の文王に仕え、立身出世して高い地位に就きました。それを知った元妻が復縁を求めて戻ってきたとき、呂尚は水を盆にくんで地面にこぼし、「この水を元の盆に戻してみよ」と言いました。当然、こぼれた水は盆に戻すことはできません。呂尚は「一度こぼれた水が盆に返らないのと同様に、私たちの関係も元には戻らない」と言って復縁を断ったのです。

この故事から「覆水盆に返らず」という言葉が生まれました。

現代では、結婚関係に限らず、広く「取り返しのつかない状況」を表現するために使われています:

例文

  1. 「大事な書類を誤って処分してしまい、覆水盆に返らずである」
  2. 「あんなことを言って友人を傷つけてしまい、覆水盆に返らずではあるが、深く後悔している」
  3. 「会社を辞めてしまった今、覆水盆に返らずだが、もう少し考えればよかった」
  4. 「ガラスを割ってしまったが、覆水盆に返らずだ」

類語

  • 後悔先に立たず – 後悔しても過去は変えられない
  • 時すでに遅し – もう手遅れである
  • 後の祭り – 時機を逸してからでは意味がない
  • 取り返しがつかない – 元の状態に戻すことができない
  • 破鏡再び照らさず(はきょうふたたびてらさず) – 割れた鏡は物を映さない
  • 覆水不返(ふくすいふへん)

対義語

「覆水盆に返らず」の明確な対義語は存在しませんが、関連する表現として:

  • 焼けぼっくいに火がつく – 一度終わった男女の関係が再び燃え上がる
  • よりを戻す – 別れた恋人同士や夫婦が復縁する

以下のような英語表現があります:

  1. “It is no use crying over spilt milk.”
    直訳:「こぼれたミルクを嘆いても仕方がない」
    最も一般的な英語表現
  2. “What’s done cannot be undone.”
    直訳:「なされたことは元に戻せない」
    シェイクスピアの戯曲『マクベス』に登場する有名なセリフ
  3. “What’s done is done.”
    直訳:「済んだことは済んだこと」

これらの英語表現は、日本語の「覆水盆に返らず」と同じように、過去の出来事を嘆いても意味がない、起きてしまったことは変えられないという意味を表しています。

「覆水盆に返らず」は、古代中国の叡智が現代にも通じる普遍的な人生の教訓として、日本語の中に深く根付いたことわざと言えるでしょう。

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