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「画餅に帰す」の意味
「画餅に帰す(がべいにきす)」とは、「考えた計画や構想が実現せず、無駄に終わる」「せっかくの努力が水の泡となる」という意味の慣用句です。絵に描いた餅は見た目が良くても食べることができないことから、実際には役に立たない計画や努力のむなしさを表現しています。
「画餅に帰す」の由来と歴史的背景
この言葉の由来は、中国の歴史書「三国志・魏書」の「盧毓伝」に記された故事に基づいています。三世紀の中国、魏王朝の文帝が人材登用について語った言葉が元になっています。
文帝は「人材を登用するときは『名(評判)』だけで判断してはいけない。名は地に描いて餅を作るようなもので、食べることができない(実際には役に立たない)」と述べました。つまり、評判や名声だけでは実際の価値はなく、絵に描かれた餅のように見た目は良くても実質がないという教えです。
この故事から、「画餅に帰す」という表現が生まれ、計画や構想が実現せずに終わる様子を表すようになりました。
「画餅に帰す」の現代における使い方と例文
現代における使い方
現代では、ビジネスシーンや日常会話で以下のように使われます:
- 計画の失敗を表現する場合:
「景気悪化により、新規事業の計画は画餅に帰してしまった」 - 努力の無駄を表現する場合:
「準備期間が短すぎて、せっかくのアイデアが画餅に帰した」 - 警告として使う場合:
「実行力がなければ、どんな素晴らしい構想も画餅に帰すだけだ」 - 反省の言葉として:
「もっと現実的な計画を立てるべきだった。すべてが画餅に帰してしまった」
例文
- ここまで順調にプロジェクトは進んでいたのに、ひょんなことでこの計画は画餅に帰すことになってしまった。
- せっかく思いついたアイディアなのに、資金不足で画餅に帰してしまった。
- 彼の計画は画餅に帰した。
- かねて種々計画したこともあったが、それは画餅に帰した。(森鷗外『羽鳥千尋』1912)
- 明日の晩お敏に逢えなけりゃ、すべての計画が画餅になる訣だろう(芥川龍之介『妖婆』1919)
「画餅に帰す」の対義語
「画餅に帰す」の対義語としては以下のようなものが挙げられます:
- 実を結ぶ:計画や努力が成果を出す、成功する
- 功を奏する:目的通りに物事が成し遂げられる
- 花開く:才能や努力が認められて成功する
- 不言実行:言葉より行動で示し、実際に成果を出すこと
「画餅に帰す」の英語表現
「画餅に帰す」に相当する英語表現には以下のようなものがあります:
- to come to nothing:何の成果も生み出さずに終わる
例:His grand schemes came to nothing.(彼の壮大な計画は画餅に帰した) - to fall through:失敗する、実現しない
例:Our plans fell through at the last minute.(私たちの計画は最後の瞬間に画餅に帰した) - to end in failure:失敗に終わる
例:The project ended in failure despite all our efforts.(あらゆる努力にもかかわらず、そのプロジェクトは画餅に帰した) - pie in the sky:実現不可能な約束や計画(直訳:空にあるパイ)
例:That new business proposal is just pie in the sky.(その新しいビジネス案は単なる画餅に過ぎない)
「画餅に帰す」は、計画が絵に描いた餅のように実体を持たず、実現せずに終わることを表す言葉として、現代の日本語でも広く使われています。ビジネスや日常生活において、実行力の大切さを戒める意味でも使われる重要な慣用句です。